突如、高級路線に? 「餃子の王将」がいま、変わろうとしている

文:日本語校閲サービス【JP-PRO】

131122
餃子をはじめ、本格的な中華料理が安く食べられる人気の「餃子の王将」がいま、変わろうとしている。これまでは一部の店舗のみで提供していた従来よりも3~4割価格が高い「極王シリーズ」を全国展開し、そしてなんとフランス料理などのメニューまでも開発を検討しているというのだ。安くて旨い中華が食べられるとして人気を博していた王将が、変貌を遂げようとしている。

これまでとは打って変わった「高級路線」の前に、同社は9月、原材料の価格高騰や人件費の上昇を理由に大きな値上げに踏み切っている。餃子の値上げはおよそ6年ぶりだが、メニュー全体に及ぶ価格の改定は実に23年ぶりという。全体で5~10%の値上げとなった。

大きな理由は材料の「国産化」だ。これまでアメリカやカナダ産だった小麦粉とインドネシア産だったショウガを国産に切り替えた。餃子のあんに使っていた豚肉やキャベツ、ニラ、ニンニクはすでに国産になっており、店頭には「餃子国産化」、「麺も国産化」などと書かれたポスターでアピールしている。

きっかけの一つはマクドナルドが使用期限切れの中国産鶏肉を使っていた問題。同社にも「王将は中国産の食材を使っているのか」などと問い合わせが相次いだという。同社の担当者によると、「安全、安心を求める消費者のニーズが国産に変わりつつある」という。

さらに「安さ」を追求するビジネスモデルが消費拡大につながらなくなってきた現実もある。王将フードサービスは長く続いたデフレのもとで急成長し、平成26年3月では売上高が前期比2.6%増を記録し、11年連続の増収となった。しかし営業利益はというと20.5%減となっており、22年3月期をピークに営業減益が続いている。消費税の増税も直撃し、さらに天候不順おあって来店客数が減っているという。

そこで消費者ニーズの多様化に合わせて王将フーズも対策に乗り出したというわけだ。通常メニューよりも割高な「極王」シリーズはこれまで東日本の一部店舗のみで提供していたが、7月に全国展開を始めた。極王シリーズの売上比率は全体の数%にすぎないが、少々値段が高くてもおいしい料理が食べたいという中高年を中心に支持を集めているという。

さらに東京五輪の開催に向けて外国人向けのメニュー展開としてフランス料理やトルコ料理などのメニュー開発をするという。

デフレ脱却を目指す取り組みとして、低価格を求める若者を散り込むよりも高品質で高価格なメニューを求める中高年にもターゲットを広げるのは効率的だという意見もある。しかしそれは、これまでの王将ファン層を切り捨てる行為にもつながり、これまでに築き上げてきたブランドを一気になくしてしまう危険性もはらむ。高級路線に転換をはかろうとする「餃子の王将」が成功するかどうか、これからの動向はほかの外食チェーンも気になるところだろう。

JP-TOPICカテゴリーの記事