青色LED発明でノーベル賞受賞の中村氏、裁判で争った元勤務先との関係改善を求めるが・・・

文:日本語校閲サービス【JP-PRO】

中村教授の「感謝で十分」、社長との面会は断る

読売新聞


ノーベル物理学賞を受賞した米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村修二氏が文化勲章を受章した。中村氏は記者会見で、青色発光ダイオードの特許を巡って裁判で争った元勤務先である日亜化学工業に対して「過去のことは忘れましょう。将来だけを見て仲良くしましょう」と述べ、関係改善を求めた。

中村氏は1999年に日亜化学工業を退社後、青色LEDの発明の対価の支払いを求めて訴訟を起こした。東京地裁は日亜化学に200億円の支払いを命じたが同社は控訴し、東京高裁は和解を勧告。同社が中村氏に対しておよそ8億円を支払った。中村氏は「和解額には全く納得していないが、弁護士の助言に従って勧告を受け入れることにした」とコメント。一方、同社の小川英治社長は「当社の主張をほぼ裁判所に理解して頂けた。特に青色LED発明が一人でなく、多くの人々の努力・工夫の賜物である事を理解して頂けた点は、大きな成果と考える」とするコメントを発表した。

中村氏は文化勲章親授式の前にインタビューで日亜化学工業に感謝する気持ちを表す。中村氏が青色LEDの開発に取り組むのを最初に認めてくれた同社の小川信雄元社長や、青色LEDを製品化した小川英治現社長、そして一緒に開発した同僚6人の貢献を表明し、さらに「これだけLEDが普及したのは、日亜化学の貢献が大きい。今もLEDのトップ企業であり、私がノーベル賞をもらえるのも、そのおかげだ」とも述べた。

中村氏と小川英治社長とは裁判の時以来、一切合っていないという。ノーベル賞、そして文化勲章を受賞したことで中村氏に心境の変化が起こったのだろうか。「人生短いから、けんかしたまま死にたくない」と現在の心境を語り、小川社長に対し「お互い誤解があった。本音で話せば仲直りできる」と面会を呼びかけた。

これに対し、同社は「(中村教授が)歴代社長や会社への感謝を公の場で述べておられ、それで十分」とコメントし、中村氏が望む小川社長との面談については「貴重な時間を弊社への挨拶などに費やすことなく、賞・章に恥じないよう研究に打ち込まれ、物理学に大きく貢献する成果を生みだされるようお祈りしております」として断った。

日亜化学工業のコメント全文は以下の通り。

「中村教授は、すでに15年前に弊社を退職された方で、弊社は中村教授に何かをお願いするような考えは持っておりません。また、同教授は今回の受賞・受章について、弊社歴代社長と弊社に対する深い感謝を公の場で述べておられ、弊社といたしましては、それで十分と存じております。
 中村教授が、貴重な時間を弊社への挨拶などに費やすことなく、今回の賞・章に恥じないよう専心、研究に打ち込まれ、物理学に大きく貢献する成果を生みだされるようお祈りしております。」

中村氏は同社のコメントに対し、「非常に残念だ。あの返事だとこれ以上の進展がない」と語った。

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