警察官が京大に無断立ち入り、学生と騒動 「京大ポポロ」事件と呼ぶ声も

文:日本語校閲サービス【JP-PRO】

「京大ポポロ」警察官無断立ち入り

産経WEST


京都大のキャンパスに私服警察官が無断で立ち入ったことで学生との間で騒動となり、波紋が広がっている。一時は大学付近に機動隊の車両が集結し、数十人の機動隊員も出た。いったい何が起こったのか。

今月4日午後0時半ごろ、「公安がいるぞ」という大声が京大キャンパスに響いた。この頃、近くでは東京都内でデモ行進に参加した京大生らが警察官に逮捕されたことに抗議する演説が行われていた。集まった学生らは見慣れない男性がいるのに気づいた。

学生ら約20人は男性を近くの校舎に連れて行き、「警察官ではないか」と詰問した。京大の副学長らが駆けつけ男性から事情をきいたところ京都府警の警察官であると説明した。その後、午後4ごろに開放される。

当時、現場付近には別の警察もおり「課員が学生に囲まれた」と府警に連絡、機動隊の車両が京大付近に集結した。数十人の機動隊員が出て一時は騒然とした雰囲気になったという。

京都大と警察の間では、大学構内に警察官が立ち入る場合には事前通告するという申し合わせがあった。学問の自由と大学の自治を尊重するという観点で取り決められたもので、大学教員や学生たちが自由に研究や活動できる場を保障するという意味合いがあるという。京大を管轄にもつ府警川端署は「警察官がキャンパスに入るのは、基本的に殺人事件などが発生した場合だけ」と説明している。京大に限らず、同じ京都市内にキャンパスがある同志社大も「警察官がキャンパスに入るのは原則として外国からの賓客などがあった場合のみ」としており、盗難被害があった場合であっても警察官が入ることはなく、キャンパスで起きたことは学内で解決するのが原則だという。関西大の担当者も、「明文化してはいないが警察官が立ち入る場合は事前に連絡が入ることになっている」と説明する。

今回の騒ぎを受け、1952年の「東大ポポロ」事件があらためて注目を集めている。東京大で開かれた演劇発表会に入場した私服警官を学生が取り押さえ、警察手帳を奪うなどしたとして暴力行為処罰法違反の罪に問われた。63年の判決で、最高裁は「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている」と言及し、大学自治について初の判断を下した。しかし一方で、演劇については「実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じる」として大学自治の範囲外に当たるとした。

51年に起きた「愛知大学事件」では、愛知大に立ち入った制服警官を拘束して殴ったとして学生が公務執行妨害や暴力行為等処罰法違反などの罪で起訴された。この事件については70年の名古屋高裁の判決で、大学における情報収集活動を含む警察活動は大学当局の許諾が必要とし、さらに公務執行妨害罪は成立しないとされた。最高裁も検察側の上告を棄却した。

騒動を巡ってはインターネットの短文投稿サイトツイッターなどでさまざまな意見があがっている。

「まだ学生運動があったのかと驚いた」
「日本の話じゃないみたい」

という驚きの声があるなか、

「ルールを破ったのは警察官の方だ」
「悪いのは不法侵入した公安!学生じゃない」

と学生や京大側を支持する意見もみられたが、

「過激派学生が警察官の身柄を拘束するのはおかしい」
「警察官が立ち入りできない取り決めがおかしいのではないか」
「公安という公務員が学生らに逮捕拘束さえたのなら、たとえマナーとして事前通告がなくても、公務執行妨害だ」

などの反響も少なくなかった。

大学自治と警察活動を巡りさまざまな意見が交錯するなか、1952年の「東大ポポロ」事件になぞらえ、「京大ポポロ」と呼ぶ声もある。

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